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連載コラム 並木麻輝子のお菓子な歳時記
第1回 ラ・シャンドルールのクレープ

フランスにはさまざまな祝祭食があるけれど、キリストの誕生から40日後にあたる2月2日は、「la Chandeleur」(ラ・シャンドルール/聖燭祭)と称される「聖母マリアお清めの祝日」。
この名は「Chandelle(シャンデル=ロウソク)」に由来し、教会ではロウソクの祝別式や、信者が火を灯したロウソクを手に行列する「光のミサ」が行われる。
歴史を紐解くと、もともとはローマ時代の人々が、松明をかざしながら一晩中街を歩き回った「牧羊神の祭り」や豊穣祈願の儀式が起源といわれ、それが5世紀後半よりキリスト教の祭りとなって受け継がれてきた。

なぜクレープなの?

この日に欠かせない食べ物といえばクレープ。
一応「聖燭祭」や「聖母マリアお清めの祝日」という名前はありつつ、フランスではほとんどの人に「クレープの日」と呼ばれ、2月2日が近くなると、スーパーマーケットにはクレープ用の材料や道具、上に塗るジャムやヌテラ(チョコヘーゼルナッツペースト)、また、すでに焼いてある便利な袋詰めクレープなども並ぶ。
この日にクレープを食べるようになったのは、クレープの丸い形状と黄色い色合いが太陽をイメージさせ、恵み多い春の訪れを思わせるからとか、太陽が光のミサのイメージと重なるから、前年の残りの小麦粉でクレープを焼くとその年は豊作になり、焼かないとその年の小麦が病気になると言い伝えられているからとか、かつて聖燭祭にてローマ法王が巡礼者にクレープ(の前身となる薄い生地)を配ったことがきっかけなど、由来説にも事欠かない。

クレープ占いで運だめし

おもしろいのは、どこの家でも、焼きながら「クレープ占い」をする点。
やり方は左手にコインを握って右手でフライパンの柄を持ち、クレープを宙に放り上げてひっくり返す。
崩れたり床に落としたりせず、無事にフライパンでキャッチできたら、その年は幸せに恵まれるそう。
聞くと簡単そうだが、これがなかなか難しい。
ちなみにクレープ好きだったナポレオンは、1812年の2月2日にクレープ占いをしたところ、4枚目までは成功したが5枚目で失敗。
同年10月、モスクワ遠征からの悲惨な退却時に「余の5枚目のクレープだ」と言ったという逸話もある。
ちなみに昔は1枚目に焼いたクレープを1年間食器棚の上に置いておくと、その年は幸せに過ごせるとか、あるいは1枚目のクレープで金貨を巻いて寝室のタンスの上に置き、翌年、金貨を取り出して、最初に家を訪ねてきた貧しい人にあげると1年中お金に恵まれといわれていたそう。 本来は宗教的な行事だが、現在では教会に行く人は少数派。聖母マリアはどこへやら、家族や友人たちとクレープを楽しむ日として定着している。 知っているようで知らないクレープの楽しみ方、みなさまもぜひお試しを。

並木麻輝子(なみきまきこ)
料理ジャーナリスト ヨーロッパ郷土料理・菓子・食文化研究家
パリの料理学校ル・コルドン・ブルーの製菓・料理上級課程終了。ヨーロッパ各地の料理・菓子を舌で確認しながら自ら取材した経験を生かし、書籍、雑誌、ガイドブック等を執筆する傍、コメンテーター、大学の生涯学習クラスやカルチャースクール講師、テレビ、ラジオ番組制作コーディネーター、レストラン等のアドバイザー、講演など食関係のあらゆる分野で活躍中。

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