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連載コラム 並木麻輝子のお菓子な歳時記
第2回 マザリング・サンデーのシムネルケーキ

今回ご紹介するのは、イギリスの母の日を彩る伝統菓子「シムネルケーキ」。
なんでこの時期に母の日の話なんだと言われそうだが、じつはイギリスの母の日(Mothering Sunday/マザリング・サンデー)は3月上旬~4月の頭頃。
日にちに幅があるのは移動祝日のためで、毎年復活祭から遡ること3週間前の日曜日(=四旬説の第4日曜日)に行なわれる。
日どりは復活祭次第で、たとえば2018年は3月の第2日曜日(11日)、今年は3月第5日曜日(31日)というように年によって変動。
ちなみに、日本の母の日はアメリカにならって5月の第2日曜日だが、ノルウェーは2月の第2日曜日とか、ロシアは11月最終日曜日、タイは8月12日など同じ母の日でも時期は国ごとに異なる。

年に一度の母への手土産

母の日の発祥は、17世紀のイギリスと言われている。
当時、親元を離れて奉公に出た娘たちが、年に1度休暇をもらって、家族の元に戻れたのが、マザリング・サンデーと言われる四旬節の第4日曜日。
帰省の際、娘たちは料理の上達ぶりを披露すべく、また母への感謝を込めてシムネルケーキを作り(あるいは雇い主から持たせてもらい)、母へのお土産にしたという。
また、キリスト教では教会が母体と考えられているため、昔からこの日はMother church(自分が幼少時から所属ししている教会)に足を運んで祈りを捧げる慣習があり、里帰り=実家に帰ること+母なる教会に戻るという意味合いもあったそう。

シムネルケーキは、土台がレーズンやオレンジ&レモンのピールなどのドライフルーツやスパイスをたっぷりと焼き込んだ、重量感のあるフルーツケーキ。
この表面に丸く延ばしたマジパン(アーモンドと砂糖を挽いて練り合わせたもの)をかぶせて、その上に丸いお団子状に丸めたマジパンを11個のせ、バーナーでお団子に焼き色をつけるのが最大の特徴。
なぜ11個なのかというと、イエス・キリストの12人の弟子のうち、裏切り者のユダを除いた11人を表現しているためだそう。
土台は、一見ベーシクッなフルーツケーキに見えるけれど、間に一層、薄く延ばしたマジパンをはさんで焼いている点がポイントだ。

名前の由来は諸説さまざま

シムネルという名前は、古代ラテン語で上質の小麦を意味する Similia conspersa に由来するというのがもっともよく語られる説。
余談だが、パスタ用の粉としておなじみのsemolina(セモリナ)は、Similia から派生した言葉だそう。
ほかにも、ヘンリー7世の時代に王室料理人を務めたとされるランバート・シムネルが考案したという話や、そうかと思えばSimon とNellyという老夫婦が、ある日残ったパン生地をどうするかで口論になり、シモンは「茹でよう」と言い、ネリーは「焼こう」と言って譲らず、最終的には「茹でてから焼く」ことに。
これが想定外に美味しく、Simon と Nelly 、2人の名前を合わせて、いつしかSimnel ケーキと呼ばれるようになったなど諸説さまざま。
現在は、オーブンで焼き上げるタイプがポピュラーだが、歴史が長いだけに、茹でてから焼くスタイルや、発酵生地を使ったパンのようなものなど、土地によってさまざまな製法が生まれたもよう。
現在はイースタースイーツとしてもおなじみのこのケーキ、もともとは、長きに渡り、母の日のお菓子として育まれてきたことも覚えておこう。

並木麻輝子(なみきまきこ)
料理ジャーナリスト ヨーロッパ郷土料理・菓子・食文化研究家
パリの料理学校ル・コルドン・ブルーの製菓・料理上級課程終了。ヨーロッパ各地の料理・菓子を舌で確認しながら自ら取材した経験を生かし、書籍、雑誌、ガイドブック等を執筆する傍、コメンテーター、大学の生涯学習クラスやカルチャースクール講師、テレビ、ラジオ番組制作コーディネーター、レストラン等のアドバイザー、講演など食関係のあらゆる分野で活躍中。

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