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並木麻輝子のお菓子な歳時記

第5回 世界のサマースイーツ(ヨーロッパ編)

いよいよ本格的に夏到来。日本には古くからかき氷文化があるけれど、諸外国の人々は、暑いこの時期どんなスイーツを食べているのだろうか?今月と来月は、2回にわたってちょっと気になる海外夏スイーツ事情をご紹介しよう。

アイスクリーム発祥の国が誇る多彩な氷菓たち

まずは日本人にもおなじみ、ジェラートの話から。
イタリア語で「凍った」という意味を持つジェラート。その歴史は紀元前まで遡り、もともとは食品を冷やすために利用した天然の氷や雪に、蜜や乳をかけて食べたのがルーツと言われている。9世紀以降、シチリア島がアラブの支配下に置かれた際、砂糖の栽培法と共に、アラブの砂糖と氷雪で作られたシャーベットの元祖「シャルバート」が伝えられたことが、今日に続くジェラート文化のはじまりだ。

ジェラート大国イタリアの中でも、ちょっとおもしろいのがシチリア発祥の「ブリオッシュ・コン・ジェラート」。ふんわりとしたブリオッシュの間に、ジェラートをサンドしたものでシチリアでは定番の食べ方だ。お好みで、サンドせずにブリオッシュを別添えで楽しんでもOK。またグラニータ(シャーベットとみぞれの中間のような氷菓)と、ブリオッシュの組み合わせもポピュラーで、とくに夏のシチリアのカフェやバルでは、朝食メニューとしておなじみだ。

続いてはローマ版かき氷「グラッタケッカ」。夏になるとあちこちに昔ながらの移動式屋台が出現するのだが、なんと氷削り機などは使わずすべて手動。大きな氷を角形のミニスコップでシャッシャッと削り、シロップやジュースをかけて供される。かなり原始的な方法だが、19世紀末から続くローマご自慢の夏スイーツだ。

ドイツ中で愛される「スパゲティアイス」

ヨーロッパ屈指のアイスクリーム愛好国ドイツ。この国にはアイスを使ったスイーツを専門とする「アイスカフェ」(Eiscafe)が数多く存在する。
そのアイスカフェの定番が「スパゲティアイス」。製法は、まず下にこんもりと生クリームを絞り、その上に専用のプレッサーでバニラアイスをスパゲッティ状に絞って、トマトソースのかわりに苺ソースをかけ、さらにパルメザンチーズに似せて削ったホワイトチョコレートかナッツをトッピングする。今ではどこのアイスカフェでも食べられるけれど、もともとはマンハイムにある「アイス・フォンタネッラ」というお店がその元祖。イタリア出身のフォンタネッラ家が経営する、100年以上もの歴史を持つ老舗カフェで、なんと200種類を超えるアイスメニューを揃えているという。

もうひとつ、ドイツならではのメニューが「アイスカフェー」(Eiskaffee)。これ、「アイスコーヒー」と思って頼むと大間違い。アイスクリームと生クリームがたっぷりのったコーヒーで、飲み物というよりも、パフェ感覚で楽しむ1品だ。

イギリスの夏はベリー系名物が目白押し

イギリスの夏を彩る「サマープディング」もこの時期ならでは。
もともとは、施設にいる高齢者や病院の入院患者など、油脂分たっぷりの重たいプディングを食べられない人たちのために考案されたのだが、その爽やかでフルーティな味わいが評判を呼び、人気のデザートへと成長したそう。周りの生地にはスポンジではなく薄切りの食パンを使用し、その中にブルーベリーやラズベリー、苺、ブラックベリーなど、砂糖でさっと煮たみずみずしいベリーをたっぷりと詰める。これに重しをして一晩寝かせると果汁がパンにしみ込んで、鮮やかな深紅の仕上がりに。華やかな見た目とキュンとした甘酸っぱさが印象的。好みで生クリームを添えていただくのが御当地流だ。

またイチゴと砕いたメレンゲ、泡立てた生クリームを混ぜた名門イートンカレッジ発祥の「イートンメス」も夏の人気スイーツ。毎年クリケットの試合で供されてきたデザートだ。
「イギリス、夏、苺」ときたら、もう一つ、ウィンブルドンのテニストーナメント名物「ストロベリー&クリーム」も忘れるわけにはいかない。苺とクリームの組み合わせ自体は、イギリスでは500年前から食べられていたと言われているけれど、ウィンブルドンにイチゴの屋台が初めて登場したのが1953年、そこに生クリームが加えられたのは1970年代に入ってからだそう。そこから約50年を経て、今ではウィンブルドンのテニス観戦には欠かせないアイテムとして定着。大会期間中には28トンのイチゴ、1万リットルのクリームが費消されるそうだ。

来月はサマースイーツ・アジア編をご紹介する予定なので、お楽しみに。

並木麻輝子(なみきまきこ)

料理ジャーナリスト ヨーロッパ郷土料理・菓子・食文化研究家
パリの料理学校ル・コルドン・ブルーの製菓・料理上級課程終了。ヨーロッパ各地の料理・菓子を舌で確認しながら自ら取材した経験を生かし、書籍、雑誌、ガイドブック等を執筆する傍、コメンテーター、大学の生涯学習クラスやカルチャースクール講師、テレビ、ラジオ番組制作コーディネーター、レストラン等のアドバイザー、講演など食関係のあらゆる分野で活躍中。

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