料理ジャーナリスト ヨーロッパ郷土料理・菓子・食文化研究家 並木麻輝子のお菓子な歳時記| SALUS ONLINE MARKET
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並木麻輝子のお菓子な歳時記

2019.10.01

意外に知らないハロウィンの話

最近は派手な仮装やパレードなどで、日本でも独自の盛り上がりを見せているハロウィンだが、そもそもハロウィンって何のお祭りかご存知だろうか? 日本にはアメリカ経由で入って来たため、アメリカのフェスティバルの一つと思われることが多いけれど、じつはヨーロッパ発祥。歴史は思いのほか長く、2000年以上前の古代ケルトの宗教行事「サフィン祭」が起源と言われている。

古代ケルトでは、10月31日が1年の終わりにあたり、この夜から翌朝にかけて、年越しと収穫を盛大に祝う祭=「サフィン祭」が開かれたという。またこの日は、現世と死後の世界をつなぐ扉が開き、先祖の霊が家に戻ってくると信じられていた。
だが、先祖の霊とともに、悪霊も一緒にやってきてしまい、家畜や畑の作物を荒らしたり、子供をさらったり、さまざまな悪さをするとも言われていた。そのため、人々は魔除けの意味を込め、かがり火を焚いたということだ。

起源6世紀頃からケルト民族はキリスト教化していくが、この祭の習慣は存続。ハロウィンという名前については、その後、キリスト教会が11月1日を「諸聖人の日」を意味する「All Hallows' Day」」と定めたことから、その前夜(イブ)=「Hallo Eve」が転じて「Halloween」になったとか。

19世紀後半にアイルランドやイギリスのケルト民族の移民によってこの風習がアメリカに伝わり、徐々にアメリカナイズされながら発展&定着し、他国にも広まったと言われている。
一般的にハロウィンの定番とされている魔女やゴーストなどの仮装や、子供たちが近所の家々をまわってキャンディーやチョコなどのお菓子をもらうこと、目と口、鼻をくり抜いて中にキャンドルを灯したカボチャのランタンなどは、すべてアメリカで育った習慣だ。
とはいえ、古代のサフィン祭の頃から、悪さをする悪霊を逆に脅して追い払ったり、悪霊たちの仲間だと思わせて悪いことをされないためなど、あくまでも身を守るために仮装する風習はあったそうだ。

ハロウィンのシンボルとも言えるカボチャのランタン「ジャック・オー・ランタン」は、怖い顔にくりぬいて中に火を灯すことで、魔除けの役目を果たすそう。ジャックとは、アイルランドの物語に登場する男の名前。ずる賢くて大嘘つきのジャックは悪魔すら騙し、まんまと「死んでも地獄に落ちない」という契約を取り付ける。だが、死後天国に行けなかったジャックは、地獄へ向かうものの悪魔との約束なので地獄にも入れず、今もあの世とこの世の間の暗い道を、カブで作ったランタン片手にさまよっているのだそう。この逸話がアメリカに渡って、カブは現地で手に入りやすいカボチャに変わり、徐々に定番のアイテムへと進化していった。

現在、ハロウィンの2大巨頭とされているのが、アメリカ、そしてケルトの流れをくむアイルランド。日本ではハロウィン=カボチャというイメージかもしれないが、アメリカでもアイルランドでもハロウィンの定番の食べ物といえばリンゴ。日本の縁日でも見かけるリンゴ飴のようなスイーツや、リンゴを使った占いも多々あるけれど、絶対に欠かせないのが「アップル・ボビング」。これ、水を入れた大きめのたらいにリンゴを浮かべ、手を使わずに口でリンゴを取るというもので、もともとはハロウィンとリンゴの収穫時期が重なっているために誕生したゲームだそう。

本場のハロウィンに欠かせない食べ物

数ある中でも、アイルランドのハロウィンに欠かせないのが、マッシュポテトにキャベツやケールを混ぜた「コルカノン」という料理。そして、ハロウィンケーキともいえる「バーンブラック」。アイルランド語で「バーン」は「イーストを使ったパン」、「ブラック」は「斑点」という意味。レーズンなどのドライフルーツをたっぷりと使い、それらが斑点のように見えるのが特長だ。伝統的には発酵生地で作られてきたけれど、現在はコーンスターチでパウンドケーキ風に仕上げたものも多い。
じつはこのパン(またはケーキ)、中に秘密の品々を忍ばせ、それらで運勢を占うという楽しいゲームつき。まずはバーンブラックを人数分に切り分け、自分に配られたカットの中に、指輪が入っていたら(独身者は)近い将来結婚、コイン=金運向上、木の枝=長生き、布地=お金に恵まれない、指ぬき=(独身女性は)生涯独身、ボタン=(独身男性は)生涯独身というぐあい。占い方や入れるものはさまざまなようだが、指輪だけは必ず入れるという。楽しい占いとの相乗効果で、アイルランドでは老若男女に愛され続ける、ハロウィンの伝統スイーツだ。

知っているようであまり知られていないハロウィンのお話。いかがだっただろうか? 日本ではアメリカ式のハロウィンが定番だが、今年の10月31日には、この祭を育んだアイルランドの伝統行事のことも思い出してほしい。

並木麻輝子(なみきまきこ)

料理ジャーナリスト ヨーロッパ郷土料理・菓子・食文化研究家
パリの料理学校ル・コルドン・ブルーの製菓・料理上級課程終了。ヨーロッパ各地の料理・菓子を舌で確認しながら自ら取材した経験を生かし、書籍、雑誌、ガイドブック等を執筆する傍、コメンテーター、大学の生涯学習クラスやカルチャースクール講師、テレビ、ラジオ番組制作コーディネーター、レストラン等のアドバイザー、講演など食関係のあらゆる分野で活躍中。

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