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並木麻輝子のお菓子な歳時記

第13回 父の日を盛り上げるイタリアンドルチェ

イタリアの父の日は3月19日

今回はイタリアの父の日「フェスタ・デル・パパ」のスイーツをご紹介。 ちなみに同じ父の日でも国によって日が異なるのをご存知だろうか?たとえばロシアは2月、オーストラリアやニュージーランドは9月、一部を除いて北欧は11月、そして今回ご紹介するイタリアは3月19日というぐあい。
歴史をひも解くと、父の日が誕生したのは20世紀初頭のアメリカ。1909年にワシントン州に住むソノラ・スマート・ドッドという女性が、男手ひとつで自分を含む6人の子供を育ててくれた亡き父をたたえ、父の誕生日である6月に教会で礼拝をあげてもらったのがその起源とされている。1966年にはジョンソン大統領が6月の第3日曜日を父の日に定め、1972年には国の記念日に制定。日本やイギリスをはじめ、多くの国はこのアメリカ式日程にならっている。 そしてその次に多いのが、イタリアと同じ3月19日。 なぜかというと、イタリア(およびカトリックの国々)では、1年365日にそれぞれ聖人が割り当てられており、3月19日の聖人はサン・ジュゼッペ(聖ヨセフ)。つまり、聖母マリアの夫、キリストの養父の日。ちなみに聖母マリアは大天使ガブリエルのお告げによってキリストを受胎したため、ヨセフはあくまでも実父ではなく養父といわれている。いずれにしろ、キリストの育ての親として重要な聖人に数えられていることに変わりはなく、イタリアでは「聖ジュゼッペの祝日」=「父の日」に定められている。

土地ごとの違いが楽しい父の日の祝い菓子

この日に欠かせないのがサン・ジュゼッペの祝い菓子。州や地方ごとにさまざまだが、もっともポピュラーかつ見た目も華やかなのが「ゼッポレ・ディ・サン・ジュゼッペ」。ドーナッツ状にぐるっと絞って油で揚げたシュー生地の中心にカスタードクリームを絞り、表面に粉糖をふって、上にシロップ煮のチェリーをあしらったものだ。生地は揚げたほうが伝統的かつ人気があるけれど、昨今の健康ブームから、たいていのお店では揚げ、焼きの2タイプを揃えている。南イタリア全域で育まれてきたが、現在一般的なゼッポレのレシピは、1837年にナポリの料理家であり文学者としても知られたイッポリト・カヴァルカンティによって記され、ナポリからイタリア全土に広まったという。

南部では、シチリア島の「スフィンチ・ディ・サン・ジュセッペ」も有名。ゲンコツ大の揚げシューの上に砂糖と刻みチョコを混ぜ込んだリコッタクリームを塗った(というよりこんもりと盛った)もので、作る人によっては上に塗るだけでなく、生地の間にもたっぷりとサンドしたダブルクリーム仕立て。伝統的にはシチリア産羊のリコッタチーズを使い、表面にシロップ煮のオレンジピールや、ピスタチオナッツ、砂糖漬けのチェリーを飾って仕上げる。ちなみに「スフィンチ」の語源はラテン語でスポンジ(海綿)を意味する「spongia(スポンジャ)」だそう。一説にはパレルモの修道院発祥と言われ、どちらかといえば西シチリアの名物として浸透している。

逆に東シチリア側では、16世紀にカターニアのベネディクト会の修道女たちが考案したという「クリスペッレ・ディ・リソ」がこの日の定番スイーツ。こちらは牛乳で煮た米をベースに、小麦粉や砂糖などを合わせて6~8cmほどの細い円柱状(ソーセージ状)に形づくり、油で揚げてからハチミツをかけていただく。いわば甘いライスコロッケで、さくっとした食感とオレンジ&シナモンの風味が特徴だ。同じくお米を使った揚げ菓子「フリテッレ・ディ・リソ」はトスカーナやウンブリア州でおなじみ。こちらは卵やお酒も加え、小さめのボール状に仕上げる。そのほか、ローマなどでもポピュラーな丸い揚げシューにクリームを詰めた「ビニエ」、ジャムを詰めて焼き上げたボローニャ名物の半円形クッキー「ラビオリ」など多種彩々。

土地ごとの違いや個々の背景も楽しいサン・ジュゼッペの祝い菓子。時期は限られるけれど、機会があったらこのお菓子の食べ比べを楽しみつつ、イタリアを巡ってみてはいかがだろうか?

並木麻輝子(なみきまきこ)

料理ジャーナリスト ヨーロッパ郷土料理・菓子・食文化研究家
パリの料理学校ル・コルドン・ブルーの製菓・料理上級課程終了。ヨーロッパ各地の料理・菓子を舌で確認しながら自ら取材した経験を生かし、書籍、雑誌、ガイドブック等を執筆する傍、コメンテーター、大学の生涯学習クラスやカルチャースクール講師、テレビ、ラジオ番組制作コーディネーター、レストラン等のアドバイザー、講演など食関係のあらゆる分野で活躍中。

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