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並木麻輝子のお菓子な歳時記

第16回 夏至祭のデザートはイチゴが主役

6月に入り、今年も夏至が近づいてきた。ご存知の通り、夏至は一年のうちでもっとも昼間の時間が長い日。その逆が冬至で、北半球の夏至の日は南半球では冬至にあたる。ユニバーサルタイム(世界時)における2020年の夏至は6月20日だが、日本では21日となる。
この日の迎え方は国によりさまざま。その中から今回は、夏至祭の代名詞的存在ともいえるスウェーデンのミッドソンマル(夏至祭)をご紹介しよう。

夏至祭に欠かせない「カエルのダンス」

スウェーデンに限らず、冬が長く暗く厳しい北欧の人びとにとってこの時期は待ちわびた太陽の季節。このシーズンに寄せる彼らの思いは非常に熱く、スウェーデンやフィンランドでは、毎年、夏至に1番近い土曜日を夏至祭の日とし、その前日の金曜日(夏至祭イブ)とともに、2日間連続で祝日に定めているほど。まさに国を挙げて夏の訪れを祝うお祭りだ。
夏至祭のイブに白樺の葉や夏の野の花々を飾りつけた、メイポール(スウェーデン語ではマイトング)を立てるところから夏至祭がスタート。楽隊や民族衣装の人びとを筆頭に、集まった人たちがポールを囲み、音楽に合わせて歌ったり踊ったりしながら夏の訪れを喜び合う。どこでも定番とされているのがカエルのダンス。皆カエルになりきり、歌に合わせてピョンピョン跳ねたり、「クーワッカッカ」と鳴き声をまねたりする微笑ましいフォークダンスだ。
ちなみに未婚の女性が野の花を7~9種類摘み、夏至祭の夜枕の下に敷いて眠ると、将来の結婚相手に夢で出会えるという言い伝えもあるそうだ。

夏至祭には何を食べる?

さて、踊りつかれたらお待ちかねの食事タイム。夏至祭の食べ物といえば、何はなくともトマトやマスタード、ニンニク風味などの「ニシンの酢漬け」、ディルとともに茹でた「新ジャガ」、そしてデザートにはこの時期に出回るスウェーデン産の新鮮な「イチゴ」。その他の品は変わっても、この三つは、毎年どこの食卓でも必ず登場する定番中の定番だ。イチゴはそのまま食べたり生クリームを添えたり、パフェ仕立てにしたり。またスポンジにイチゴをサンドして生クリームで飾ったデコレーションケーキもポピュラー。ちょっとおもしろいのが、生のイチゴをスポンジ生地に焼き込んだ「ヨードグッブスカーカ」と、イチゴを水と砂糖、レモン汁とともにやわらかく煮て、ポテトスターチでとろみをつけた「ヨードグッブスクレーム」。後者はイチゴクリームという名前だが、イチゴの形状は残し、これをたっぷりの煮汁とともに味わうもので、クリームというよりイチゴスープという方が近い。これらに蒸留酒のシュナップスやビールを添え、飲んで食べて歌って踊って……。を繰り返しながら、ミッドソンマルの夜はふけていく。

ちなみに日本では、夏至からその11日後の半夏生(はんげしょう)にかけては、昔から田植えのラストスパート時期とされ、スウェーデンのような全国的な夏至祭はないものの、豊作祈願のお供え物や慰労会の食卓には、各地各様の食べ物が並んだ。その名残として、現在も福井の「半夏生鯖」と呼ばれる焼きサバ、収穫したての小麦ともち米で作った餅にきな粉をまぶした、奈良県周辺の「半夏生餅」などさまざまある。
また日本の6月は、身についた半年間の穢れを祓い、残り半年の無病息災を祈る「夏越の祓(なごしのはらえ)」があり、京都ではこの日に三角の白いういろう生地に、厄除けの意味を持つ艶よく煮あげた小豆を施した「水無月」というお菓子を食べる習慣がある。

ここ数カ月は、それまで当たり前だと思っていたことがいとも簡単に当たり前ではなくなることを誰もが痛感した。太陽が力強く輝くこの時季、その光がもたらす恵みにも改めて感謝したいと思う。

並木麻輝子(なみきまきこ)

料理ジャーナリスト ヨーロッパ郷土料理・菓子・食文化研究家
パリの料理学校ル・コルドン・ブルーの製菓・料理上級課程終了。ヨーロッパ各地の料理・菓子を舌で確認しながら自ら取材した経験を生かし、書籍、雑誌、ガイドブック等を執筆する傍、コメンテーター、大学の生涯学習クラスやカルチャースクール講師、テレビ、ラジオ番組制作コーディネーター、レストラン等のアドバイザー、講演など食関係のあらゆる分野で活躍中。

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