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並木麻輝子のお菓子な歳時記

第18回 世界のクールデザート(アメリカ編 Part2)

前回に続き、アメリカのクールデザート第2弾。今回は日本人旅行者も多いハワイ、そしてちょっと珍しいラテンアメリカの冷スイーツを歴史とともに紹介しよう。

日本の文化が息づくハワイの冷製スイーツ

ハワイのクールデザートと聞いて、真っ先に名前があがるのが「シェイブアイス」。shave(シェイブ)=「削る」という意味で、要はハワイ式のかき氷のこと。上からかけるシロップはイチゴや、抹茶、リリコイ(パッションフルーツ)など、多い店では40~50種も揃う。日本では一つのかき氷に対し、たいてい1種類のシロップをかけるけれど、ハワイではレインボーカラーなど、風味や色の違うシロップを数種類かけたカラフルなものもポピュラー。トッピングも多数あり、組み合わせは無限大だ。
古くはプランテーションで働く日系の労働者たちが、大工道具のカンナで氷を削って食べていたと言われているが、現在に続くシェイブアイスの歴史が幕を開けたのは今から70年前の1951年。砂糖プランテーションで働いてきた日系2世の松本守さんが、のちに開業した食料雑貨店にて、日本から取り寄せた手動の氷削機で氷を削り、自家製シロップをかけて出したのがはじまりだ。

続いてはハワイのソウルフードと言われる「モチアイス」。モチは「餅」のことで、アイスクリームを薄いモチ皮で包んだものだ。1981年に日本で発売された「雪見だいふく」をヒントに、アメリカで代々和菓子を販売してきた日系人が、現地の環境に合ったレシピを開発し1993年から発売。その後ハワイにも伝わり、現在ではハワイ名物の一つとして広く親しまれている。あちこちのスーパーで手軽に購入でき、箱入りのほか、セルフサービスでバラ買いも可能。常時20種以上あるという豊富なアイテムとともに、餅の色がピンク、青、黄などフレーバーによって異なるのも特徴だ。

500年前の製法を今に伝えるエクアドルの平鍋アイス

南米西部エクアドルに伝わるパイラこと「エラード・デ・パイラ」も忘れてはならない。エラードはスペイン語でアイスクリーム、パイラは平鍋(基本的には銅製の両手鍋)のことで、料理はもちろん、アイスクリーム作りにも活躍する。製法は刻んだフルーツまたはチョコレートなどのベースの素材と砂糖、卵白を混ぜ合わせてパイラに入れ、塩を入れて0度以下に温度を下げた氷水に鍋の底をあてながら、鍋を手動でグルグル回し、もう片方の手で中身をヘラなどで混ぜる。10分も回していると徐々に中身が固まって、アイスとシャーベットの中間のような氷菓が完成。一説には今を遡ること約500年前、北部の先住民がインバブーラ火山の雪や氷を用いて作ったものがルーツとか。時代が変わっても伝統は受け継がれ、現在も市場や道端の屋台、専門店、レストランなど、あちこちでこの古式製法に出会うことができる。

スイーツにも唐辛子? 梅干しの派生形?興味が尽きないメキシコの冷名物

数年前に専門店が登場して以来、日本でも徐々に知名度を上げているのがメキシコのアイスキャンディー「パレタ」。内容はフルーツジュースベースと、ミルクベースに大別されるが、ともかく種類が多い。スイカ、オレンジなど、1種類の果汁を固めたものから、カットした生の果実がゴロンと入ったもの、フルーツのピューレをマーブル状に混ぜたもの、そのほかチョコやクッキー、ナッツ入りなど、店ごとに楽しいアレンジが数多く揃う。1940年代の初頭、メキシコ人のイグナシオ・アルカサル氏がアメリカ訪問中にヒントを得て、帰国後に地元ミチョアカン州トクンボの新鮮な果実を使って作った棒付きの氷菓が、今やメキシコの国民食とも言われるパレタのことはじめだ。

辛いものが大好きなメキシコ人は、パレタやアイスクリームにもチリをトッピングしたり、スイカやマンゴーなど、屋台のカットフルーツにチリとライム汁をまぶしたり、料理のみならず、スイーツにもチリを多用。中でもピリ辛クールデザートの代表格といえば「チャモヤーダ」だろう。コレ、もっとも好相性と言われるマンゴーをはじめ、アンズ、パイナップルなどのソルベやアイスクリームに、チャモイという甘辛酸っぱいチリソースをたっぷりとかけたもの。チャモイはアンズをベースに、唐辛子や砂糖、塩、ライムジュース(またはビネガー)などを加えた濃厚なペーストで、現在は手軽にドライのアンズで作ることも多いけれど、伝統的にはアンズを塩漬けにしたものを使って作られてきた。人によってレシピは多少異なるが、総じて辛味のある梅ジャムのような味わい。もともとは1900年代の半ば頃、日系移民が梅の代わりにアンズで梅干し風の塩漬けを作り、これを「チャモイ」と呼んだのがはじまりだそう。現在チャモイソースは、さまざまなブランドから出ており、メキシコの日常生活の中で幅広く活躍している。

世界にあまたあるクールデザートのなかでも、日系移民たちが伝え、他国で親しまれている品々の存在は感慨深い。この夏は、日本とは違う形に成長を遂げた「日本生まれ異国育ち」の冷菓を思いつつ、かき氷やアイスを堪能したいと思う。

並木麻輝子(なみきまきこ)

料理ジャーナリスト ヨーロッパ郷土料理・菓子・食文化研究家
パリの料理学校ル・コルドン・ブルーの製菓・料理上級課程終了。ヨーロッパ各地の料理・菓子を舌で確認しながら自ら取材した経験を生かし、書籍、雑誌、ガイドブック等を執筆する傍、コメンテーター、大学の生涯学習クラスやカルチャースクール講師、テレビ、ラジオ番組制作コーディネーター、レストラン等のアドバイザー、講演など食関係のあらゆる分野で活躍中。

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