料理ジャーナリスト ヨーロッパ郷土料理・菓子・食文化研究家 並木麻輝子のお菓子な歳時記| SALUS ONLINE MARKET
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並木麻輝子のお菓子な歳時記

第21回 インドのお正月「ディワリ」にはミタイが不可欠

今回紹介するのはインド最大のお祭り「ディワリ」。別名「光のフェスティバル」とも称されるこの祝祭は、ヒンドゥー教の新年のお祝い=インドのお正月にあたる。クリスマスもまだなのに、もう新年の話ですか? などと言うなかれ。日本でお正月といえば1月の頭だが、インドではヒンドゥー暦の7番目の月の新月の日(グレゴリオ暦では10月後半から11月前半ごろ)に到来。今年2020年は11月14日、来年は11月4日というように、日にちは毎年変動する。ちなみにディワリという名は、サンスクリット語で「光の列」を意味する「ディーパヴァリー」に由来。もともとは冬が来る前の、収穫を祝う日だったと言われているが、現在は名前通り、国中がきらびやかなライトアップと無数の花火に彩られる。

5日間それぞれに意味があるインド最大のお祭り

ディワリの祝祭は、メインフェスティバル(今年なら11月14日)を中日として、前後2日を合わせた5日にわたって開催。まず初日は、縁起を呼び込むため家の大掃除をする。同時に必要な箇所の修理やペンキの塗り替えなども行うそう。また、ろうそくや電飾など、光に関するものを中心に家に装飾を施し、ランゴリという幸運を象徴する砂絵を床に描いて来客や女神・ラクシュミーを迎える準備を整える。2日目は準備や休息にあてつつ比較的静かに過ごす。3日目がメインイベントの「ラクシュミー・プージャ」。富と美、豊穣の女神であるラクシュミー、そして幸運をもたらすガネーシャに祈りを捧げ、その後は家族や親戚とともに食卓を囲む。この期間の食事は、普段ノンベジの人でもベジタリアンとなり、肉や魚、卵は食べない。と言ってもけして簡素ではなく、ハレの日にふさわしいご馳走が並ぶ。その翌日(4日目)が新年。5日目が兄弟姉妹への感謝の日とされている。

ディワリのもう一つの主役「ミタイ」

ミタイとは、インドの伝統的なお菓子の総称。ディワリの前にはボーナスと一緒に職場から支給されたり、お茶うけとして、お供え物として、贈り物の筆頭として大活躍。お菓子屋さんはこの期間だけで年間の半分の売り上げがあるという。星の数ほどあるミタイの中でも、ラドゥやバルフィはディワリをはじめ祝祭でもおなじみだ。
映画「マダム・イン・ニューヨーク」にも登場した「ラドゥ」は、ヒヨコマメの粉やセモリナ粉に砂糖、スパイスなどを混ぜて火を入れ、ボール状に丸めたお菓子。挽いたココナッツや米粉、オートミールを使ったものや、ナッツをまぶしたりドライフルーツを混ぜ込んだものなど、さまざまなタイプがある。ヒンドゥー教の神様のひとり、象頭のガネーシャの大好物としても有名だ。
薄めのひし形、または四角形の「バルフィ」は、煮詰めた牛乳やコンデンスミルクに砂糖、粉末のアーモンドやカシューナッツ、刻んだナッツ類などを合わせた半生のミルク菓子。ラドゥ同様さまざまな種類があり、銀箔を貼ったものは祝い菓子の定番とされている。

また、サフラン入りの生地を渦巻き状に揚げ、シロップに浸したインド版かりんとう「ジャレビ」や、「世界一甘いお菓子」の異名をとるシロップ漬けのボール状ドーナッツ「グラブ・ジャムン」、ディワリのスペシャルスイーツとして、贈り物にも人気の「ソアンパプディ」(何度も伸ばして折り重ねることで繊維状の層を作った飴と、ヒヨコ豆の粉、カルダモンを合わせて固めた菓子)など、どこの家庭を訪れても、種類豊富かつ山盛りのスイーツに迎えられる。

映画「ボヘミアン・ラプソディ」にも登場し、世界的にも注目を集めているインドの「ミタイ」。映画の中ではフレディ・マーキュリーが「ライブ・エイド」の会場に向かう前に、恋人のジムと実家に寄った際、フレディの父親がお菓子を勧める。日本語訳は「インドの菓子だよ」となっているが、実際は「ミタイだよ」と言っている。ちなみにフレディの両親はインド出身。ミタイはフレディの好物だと映画の中でも語られている。最近は東京にも何軒か「ミタイ」の専門店が登場し、スイーツファンを中心に人気上昇中。上記のお菓子にも出会えるので、興味がある方は、ぜひ足を運んでみてほしい。

並木麻輝子(なみきまきこ)

料理ジャーナリスト ヨーロッパ郷土料理・菓子・食文化研究家
パリの料理学校ル・コルドン・ブルーの製菓・料理上級課程終了。ヨーロッパ各地の料理・菓子を舌で確認しながら自ら取材した経験を生かし、書籍、雑誌、ガイドブック等を執筆する傍、コメンテーター、大学の生涯学習クラスやカルチャースクール講師、テレビ、ラジオ番組制作コーディネーター、レストラン等のアドバイザー、講演など食関係のあらゆる分野で活躍中。

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